闇の森の奥のエルフが住むところからいくらか少し離れた場所に2人はいた。

そこは深い森の中でも少し開けたところで、一面の色とりどりの花が咲いていた。

風が吹くと花びらが飛ばされて舞い上がる。

なんとも幻想的な光景だった。

「……すごいなここは。」

「でしょう?誰も知らない私のお気に入りの場所なんです。」

嘆息しつつ漏らされた呟きに、レゴラスは満足そうに笑った。





2人はしばらくの間、花に埋もれるように寝転がっていた。

「………ねぇ、素敵だと思いません?」

レゴラスの問いかけに彼の方を見ると、レゴラスは腕を広げてうつ伏せに寝転がって目を閉じていた。

「こうしていると、まるで花に抱かれているみたい……。」

うっとりと囁くその姿を見ればこの美しい光景も色あせてしまう。

「こういうのもたまにはいいでしょう…?」

いつも危ない旅ばかりして疲れているあなたには、と聞こえた様な気がした。

アラゴルンはレゴラスの気遣いが嬉しかった。

確かに自分はひどく疲れていた。

この何年かガンダルフと共にゴクリを探し続けてモルドールにまで行ったのだ。

やっとゴクリを闇の森のエルフに託して自分の仕事が終わった。

しかしまたすぐに野伏として放浪の旅に出なければならない。

ヌメノール人といえど人間である自分には時間はとても惜しいものだから。



「アラゴルン!」

物思いにふけっていると、いつの間にかレゴラスが上から覗き込んでいた。

「なにしてるんですかあなたは!今はそんな難しい顔して考えるに浸るときじゃありませんよ。

何のために私がここにつれてきたと思ってるんですか?」

少し苛立った口調で責めるレゴラスの、今日は珍しく結んでいない髪が光に透けて。

思わずアラゴルンはその1房を手にとって口付けていた。



それはとても神聖な儀式のようで。



「アラゴルン…?」

そっと髪を放してアラゴルンは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「枕でもあればよく眠れるんだが。」

一瞬きょとんとしたレゴラスはすぐにその意図を悟り、優しく微笑んだ。

「まったくあなたはいつまでも我が侭な子供のままですね。」

そう言いながらも隣に腰を下ろして「どうぞ。」と言ってくれる。

アラゴルンはレゴラスの膝の上で目を閉じた。

優しく頭を撫でられる心地よさに酔いながら。

レゴラスは風に髪を弄ばれながらゆっくりと歌を歌い始めた。






遠い異国を旅するあなた

あなたも同じこの空を見ているだろうか

暗闇があなたを覆ってはいないだろうか

白い船の浮かぶこの空を あなたの瞳に重ねては

あなたを想う


風が走り 私の髪をさらう

どうか私の心も共にさらっていって

いつか届けておくれ あの人のもとに


いつか同じ星空の下を あなたと共に歩けたら

あなたはたくさんの成すべき事を背負い

その重荷に苦しんでいる

重荷を分かち合うことが出来なくとも

せめて運命を共に あなたと共に


大いなる力の前では 儚い想いだとしても

貫いてみせよう どんなことがあろうとも


いつしか旅立つあなたに 私は歌を贈ろう

共には旅立てないけれど それでも

あなたを想う気持ちは変わらないから


暗闇があなたを覆ったら

夕闇に輝く夕星が あなたを照らすだろう

それでも私はあなたを いつまでも見守り続けよう


大切なあなた

今はただ休息を 心を休める一時を






眠りから覚めるとレゴラスの膝はなかった。

ただレゴラスの着ていた濃い緑の上着がかけられていた。

上体を起こして頭をはっきりさせる。

「……レゴラス?」

「はい?起きましたかアラゴルン。」

後方からの声を聞いて安堵の息を漏らす。

まだいくらかたよりない動作で立ち上がると、レゴラスの隣に行って腰を下ろす。

「ああ、よく眠れたみたいですね。顔色が全然違う。」

微笑みながらアラゴルンの頬に触れる。

アラゴルンはその手を握って大切そうに口付けた。

「…………さっきの歌。あれはどういう意味だ?」

真剣な声音に変わったアラゴルンの言葉には答えず、レゴラスは膝のものをアラゴルンに見せる。

「これ、なにに見えます?」

レゴラスが差し出したのはここの花で作ったであろう花冠。

「レゴラス。答えになっていない。」

「私ね、春になる度に父上に花冠を贈ろうといつもここで練習してるんです。

でもいつもエルロンド卿に先をこされちゃって!いつも贈れないんですよ。」

くすくすと笑い声をたてて笑うレゴラスの意図が見えない。

困惑して眉をひそめていると、レゴラスは急に真剣な顔になった。

「これをあなたに差し上げます。」

レゴラスは仕上げとばかりに、花冠に最期の1本をつけた。

「ここ闇の森でこれがどういう意味を持つか、あなたは知っているでしょう?」

アラゴルンの目は驚愕に揺れた。


闇の森で花冠とは王冠。

そしてそれを頭に頂けるはただ1人。

それは王のみ。


「レゴラス…!」

アラゴルンの驚いた声を聞いて、レゴラスはにこりと微笑み立ち上がった。

「私、闇の森のレゴラスは花冠をあなたに与えよう。ゴンドールとアルノールを治める唯一の王として。」

花冠はアラゴルンの頭に置かれて、レゴラスはアラゴルンの額にキスをした。

「……これが、私の気持ちです。アラゴルン2世。」

レゴラスの想いを知ったアラゴルンはレゴラスをかき抱いた。

反動で花冠がずれ落ちる。

「…いいのかレゴラス。王になれば私は・・・」

「いいんですよアラゴルン。運命があなたを待っています。ただ…」

語尾が震えた。

レゴラスはアラゴルンの背に手を回して強く抱きしめた。

「…ただ、あなたと離れるのは、失うのはつらい…!」

嗚咽の混じった、レゴラスの本音だった。

アラゴルンは胸に顔をうずめるレゴラスの顎をとり、強引に口付ける。

そのまま花のじゅうたんの上に倒れこみ、啄ばむようなキスを何度も繰り返す。



目に 頬に 唇に 額に 耳元に 首筋に。



何度もしていると下のレゴラスから笑い声が聞こえた。

「ア、アハハ!くすぐったいですよ、アラゴルン!」

気をよくしたアラゴルンはまた何度も繰り返した。

笑い声が泣き笑いを含んだものに変わるまでは。

最期に目元に口付けると、透明な滴があふれ出した。

「今は、今この時は、私だけのものになってください。」

「…ああ。もちろんだ。」

アラゴルンは深く唇を重ねた。

腕の中で泣くエルフの耳元に何度も「愛している」と囁いて。









運命が2人を別つまで。











☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
愛するキヨさん(秋月さん)に素敵小説をもろてしまったよ!!(バカ)
わあああんありがとうございますー!!!
しかもなにやらアタクシめのヘボ絵からだそうで!?ギャース嬉しすぎ!!(うっさい)
切ない系万歳!本当にありがとうございましたー!!
感動しすぎておもわずヘボ絵を押しつけてシマタです。アヒーすみません!

キヨさんのサイト「Ice Field」へゆきたい!!てな方はリンクへGO!!


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