闇の森の奥深いエルフの王の館。

午前の職務を終えて、スランドゥイルは憂鬱そうに溜め息をもらした。

外は明るい日差しが降り注いでたくさんの植物や動物が春の訪れを喜んでいるというのに。

それなのに。

自分は(自分でいうのもなんだが)こんなしみったれた館の中で雑務をやらなければならない。

朝から夕方まで。机に向かってなければならないのだ。

それは自然を何より好む森のエルフのスランドゥイルには中々つらいことだった。

再び溜め息をもらす。



憂さ晴らしに今日また宴でもやろうか………。



王になった今の楽しみは宴と葡萄酒と宝石くらいなものだ。

いつも自由奔放な愛息子は見ていて微笑ましいが、同時に羨ましくもあった。

スランドゥイルは自分がまだ王子だった頃を思い出した。


あの頃は楽でよかった。

好きなだけ森にいれたし少し離れた湖にも行けた。

こっそり森を抜け出して父上にさんざん怒られたこともしょっちゅうだった。

記憶の中に時折出てくる黒髪のエルフのことは思い出さなかったことにして。


「………あの頃が懐かしい。」

懐かしい思い出に浸ってつい顔が緩んでしまう。

その時、突然ガタリと物音がした。

気づかなかった自分に驚きながらも、音のした方を振り返ってみると。

そこには例の黒髪のエルフがいた。

「…エルロンド。貴様また来たのか?」

声をかけても反応がない。

訝しんで見ていると、エルロンドはいきなり壁に手をついた。

まさか具合が悪いのか?

こいつに限って有り得ないと思いつつも、人のいいスランドゥイルは声をかけようとした。

が。

「なんということだ!今、今スランドゥイルが滅多に見せない天使のように美しい微笑を見せたというのに!!

今日に限ってカメラを持ってき忘れるなんて!私としたことがっ!!!」

どうやら本気で悔しがっているらしい。

そんなことをほざきながら壁に拳を打ち付けている辺り、こいつがほんとに裂け谷の主なのか悩むところだが。

「そこの変態。壁に触れるな。腐食する。」

冷たい言葉を放つスランドゥイルの目は本気でそう思っている目だった。

「だいたい何故毎年春になると来るんだ。貴様、自分の土地を空けていいのか。

責任はどうした。まともな思考と共にどこかに忘れてきたのか?」

冷たいを通り越して酷いことを次々と言うスランドゥイル。よくそんなに蔑みの言葉が出てくるものだ。

「酷い言い方だな。それではまるで私が異常者のようじゃないか。」

「やっと自分のことがわかってきたようだな。変態エルフ。」

「毎年やってくるのはお前に花を贈るためだよ、スランドゥイル…。」

エルロンドはスランドゥイルの顎をとり、甘い声で囁いた。蔑みをものともしない彼はある意味凄い。

「また持ってきたのか。…レゴラスが残念がるだろうな。今年こそわしに花冠を贈ると言っておったのに。」

「いくらお前の息子といえども負けは出来ん。」

誘惑を綺麗さっぱり無視して声を落とすスランドゥイルと誤魔化されたことに気づかず子供に嫉妬するエルロンド。

一般の人がこの2人を見るとエルフというものを誤解してしまうだろう。





「見ろスランドゥイル!今年はニフレディルとエラノールもある。好きなものを選べ!」

机の上はたくさんの花で埋め尽くされた。主に裂け谷の花だが、なぜかロスロリアンの花まである。

「……まさか盗んできたのか…?」

顔を白くして尋ねるスランドゥイル。

普通なら有り得ない話だろうが、エルロンドなら有り得るかもしれないと思えてしまう。

「まさか。こちらに来るついでに寄った時に少しもらえないかとガラドリエル殿に頼んだんだ。

最初はドスのきいた声で『ハァ!?』と言われたがスランドゥイルにやるのだと言ったら快くわけてくれた。

最後に『応援してるわよ!』と言われたんだが、何のことだろうな。」

「…さあ。変わったエルフだからな彼女は。」

このような会話が成立する辺り、この2人実は天然なのかもしれない。



「しかし困ったな。これだけあっては選ぶのもたいへんだ。それに…」

「それに?」

スランドゥイルは花を弄びながら少し悲しげな顔をした。

「こんなにたくさんの花があっても選ぶのはわずかだ。………もったいない。」

エルフ特有の尖った耳を少し垂れさせながら言うその姿はとても愛らしかった。エルロンドにとっては。

今すぐ襲い倒したい衝動をなんとか理性(そんなものあるのか謎だが)で抑えてやりすごす。



スランドゥイルは花を眺めてとても幸せそうにしていた。

一方エルロンドはそんな姿を見て鼻血を出さないように一生懸命だった。

「お前はいいな。優秀な右腕がいて。」

ぽつりと呟かれたその言葉に、エルロンドは首をひねった。

「ここにも優秀な者たちはたくさんいるだろう。それにここは1番エルフの数が多い。」

「けれどグロールフィンデルのような者はおらぬ。それに数が多ければまとめるのが大変だ。」

はぁ、と溜め息をつく姿はいつもの彼らしくない。

スランドゥイルはテラスの外を見た。

「…………森に行きたい。」

その言葉ではじめて彼の切なる思いに気づいた。


スランドゥイルは森のエルフ。

けれど王である彼にはたくさんの仕事がある。そして責任も。

例えすぐそばの森でも軽々しく出かけたりはできないのだ。


エルロンドは立ち上がると、スランドゥイルの手をとった。

「では行こうか、スランドゥイル。」

「は…?」

エルロンドはスランドゥイルを引っ張って歩き出した。

「おい!どこに行くんだ!?」

足はとめずにエルロンドは振り返って笑いかけた。

「我らの故郷へだ。」

驚いてエルロンドを見つめると、悪戯っぽい笑顔で片目を瞑ってきた。

エルロンドの心遣いを知ってスランドゥイルは破顔した。




途中、何人か部下にあって驚いた顔で見られたが気にしなかった。

「王!どちらに行かれるのです?午後の職務はどうするおつもりですか!?」

側近が慌てた様子で声を上げたが、わしは笑って

「さぼる!」

と大声で言った。

呆気にとられる周囲の顔を見て、思わず声を上げて笑ってしまった。

大声で叫んだり笑うのはいつぶりだろう。





ひどく懐かしい。

すぐそばにあったものが今まではひどく遠く感じていた。

「エルロンド。」

「なんだ?」

「礼を言う。」

スランドゥイルはふわりと微笑んだ。

「礼なら、こちらの方が嬉しい…。」

エルロンドはそっと唇を重ねた。






2人は日が暮れるまで森を楽しんだ。










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エルスラですよ。(どーん)愛するキヨさん(秋月さん)がなんと!なんと!!
エルスラかいてくださいましたよ!!(ギャフン!)大好き!大好きキヨさん!(うっさい)
エルスラ素敵〜vやっぱ素敵〜v(世の流れを逆流する奴)(←イシエル)
んんんんもうありがとうございましたーーーーー!!!
しかも小説よんでヘボ絵を押しつけてシマタ。(ゲフ)スンマセン・・。

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