さようなら、すべてへ






















good by,toall
〜さようなら、すべてへ〜



















海はおだやかだった。
決して交わる事の無い空と海の間には、水平線がひかれている。
となりにいるべきはずの彼はもうこの世にはいなかった。
揺れる黒髪。
煙るパイプ草の香り。
すべて忘れてしまったようで、今でもしっかりと覚えている。
雲から太陽が顔を覗かす。出航を待つ船のましろい帆が幾重にも折り重なって見えた。
ましろい鳥が飛んでいる。船の帆に飛び交う鳥が溶け込んで、しろいいろは見分けがつかなくなってしまった。
















「明日、旅立ちます」

(ほんとうはあなたといっしょにいきたかった)

「……そうか」

(おまえをとおくにいかせたくはなかった)

「あなたを、、」

(唯、唯、、あなたのことを)

「………わかっているよ」

(いとしいいとしい、私の緑葉)

「これを…」

(いつまでもわすれないでくれ)

「これは…」
















「レゴラス…そろそろ出航の時間だぞ…」
そんなドワーフの声はレゴラスの耳には届かなかった。
「先に、行くぞ」
そうとだけ言うと、レゴラスの荷物を持って船に向かって歩き出した。
「こんなものを持たせるなんて…」
レゴラスは呟く。
波は寄せては消えていく。
一艘の船が白い帆を高々と掲げた。ましろい帆に陽の光を受けながら、出航していく。
ばさばさと聞こえる白い帆の音。掲げられた帆から幾筋もの光が漏れている。
その光を受けて、レゴラスの手の中が金色に輝く。
金の、ペンダント。
純金で作られたそれはつやつやとレゴラスの手の中で光っていた。
















「これを、だな…」

(決してうしろを振り向かないで)

「これを…?」

(離れたくはないのに)

「これを、レゴラス、、どうかこれを持っていてほしい」

(失うものは、もうなにもないのだから)



ポタリ。



大粒のなみだが次々にましろいシーツにしみをつくる。

「泣くな…。泣かないでくれ、レゴラス。もう、これ以上…」

(おまえが泣く必要はもうないのだよ)

「わかって…ま…す」

(わかってはいても、なみだはとまらないの)

「もうこの世で会う事はないのだな…」

(さよなら、愛しい緑葉。永遠に)

















カチリとペンダントを開ければ。
小さい彼の肖像画が右側に描かれていた。
左側には、文字が彫ってある。
なみだが溢れて、文字は見えない。
何と書いてあるのだろう?
読もうとすれば、またなみだが溢れそうになった。
うつむいて、両手で顔をおおう。
けれど。
もう泣かない。
もう泣かなくてもいいのだ。彼が、そう言ったのだから。
なみだを拭い、乗るべき船へと足を運ぶ。
















この様子をギムリは船着場からずっと覗いていた。
レゴラスはこちらに向かって歩いてくる。
ギムリは目を閉じて溜息を付く。
そして、目を開いた、その瞬間。
レゴラスの隣に、ギムリが見たものは。








黒いマントに、漆黒の黒髪。高い背丈、威厳にみちたその姿。








その人は、まさしく、
まさしくアラゴルンであった。
ギムリは驚いたまま、その場に立ち尽くし。
アラゴルンはしっかりとギムリの方へ歩いてくる。
かつて旅を共にしていたときの彼であった。
アラゴルンはあれからの年月を重ね、かなりの老体になった、と聞く。
しかし、彼はあの頃のままの、あの頃のままの姿であった。
アラゴルンはレゴラスを目だけで追い、優しく微笑んでいた。
ギムリにはすぐに判ったのであった。
彼は、アラゴルンは決してこの船に乗る事はできないのだ。
たとえ魂の存在となった今でも。
そしてアラゴルンは、ギムリの方を向いて、







「レゴラスを、頼むよ」







そう言ったのだ。
うつむきながらも、ギムリはそれに頷いた。
ギムリが顔をあげた時。
自分の前にいるはずのアラゴルンはもうどこにも見当たらなかった。
「……必ず、そうしよう」
その声はアラゴルンに届いたのであろう。
優しい風が、ザワリと吹いた。
先に船へと乗り込んだレゴラスが言う。
「ギムリ!何をしているんですか!さぁ、出発しましょう!!」
そう言ったレゴラスの顔は、無理をしてつくった笑顔では無く、眩しいくらいに輝いていた。
















すばらしい速度で出発する、ドワーフとエルフを乗せた船。
レゴラスとギムリは船の上で潮風に吹かれていた。

















「親友、もう、泣くなよ」
レゴラスの隣でドワーフはそう呟く。
「………」
「…レゴラス、きっとアラゴルンは…」
「さようなら、って言えなかった」
強い潮風。
白い帆がバサバサと音を立てて。
「まだきっと、別れたくなかったんだね」
金糸の髪は潮風に靡いて。
ドワーフはうつむいたまま、言う。
「彼は、いつも、見守っているよ」










美しい森。清らかな川の流れ。さえずることり。
愛する私の故郷!中つ国!!












うたう、エルフ。
何処へいくの。
何処へいこう。
うたう、エルフ。
なかない、エルフ。







さようなら、すべての美しいもの。
さようなら、すべての愛しいものよ。
さようなら、いちばんいとしいひと。























『すすめ、いとしい我がエルフ』






















ペンダントには、そうとだけ彫られてあった。



















++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ end.


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ア゛ー!!!(うるさい)素敵すぎます切なすぎますアタイ幸せ!!(最低)
神埜さんのサイトで騒ぎ立てた(死)ところなんと持ち帰りOKとの返事が!
ワーイワーイヤッター!!!(ウッワこいつ最低!)ありがとうございましたー!!!

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